お昼ごはんを食べにダイニングへ行くと、日本人の女性がいた。 まさかこんな所で日本人に会うとは思っていなかったのでびっくり。 話してみると、ナイロビ在住だけれど、来月また他国へ引っ越すので、最後に「一度泊まってみた方が良い」と駐在人の間で話題のションポーレへ来たのだという。 2泊して分かったことだけど、ここへ来る人は、他のロッジと違ってナイロビに駐在している外国人が多いようだ。 素晴らしく気持ちよい上に、部屋で食事をすることもできるので、人と顔を会わせずに過ごすこともできる。 ビルゲイツ御用達というのも納得のロッジである。 昼食は、ブッフェタイプで生バジルたっぷりのパスタとラザニアをいただく。 乳製品がダメな友人には、特別にトマトパスタを作って持ってきてくれた。 んー、素晴らしい。 |
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夕方、マサイ族のオレ・クイアが運転する四駆でゲームドライブへ。 草からにょっきりと顔を出してる大きな鳥は、アフリカオオノガン。 |
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保護区ではないので動物の数は少ないけど、草食動物がいるので、肉食動物もいる。 そんなにロッジから走らない場所だ。 四駆はドアがないので、車に乗っていれば大丈夫だと分かっていても怖い。 何しろ相手は野生の動物なのだ。 |
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陽が傾いてきた。 | |
夕方になって寝床へ向かうシマウマのあげる土煙が、光に輝いて美しい。 動物は一列になって歩くので、大地には獣道が細く長く続いている。 |
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ロッジの名の由来にもなったションポーレ山が見える小高い丘の上で、休憩。 まだ若いオレクイアは、新しい道を開拓したいのか、あっちこっち走っては進めなくなって引き返し、結局他の車に乗ってたマサイ族のクリストファー(マサイネームはケロイ)に誘導されて、やっとこ頂上へ。 頑張れ若人よ。 それにしても、外国人は絵になるな〜。 |
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車を停めると、オレクイアがゲームドライブ前にリクエストしていたオレンジジュースを準備してくれた。 何とおつまみまでついている。 ありゃ〜、これならお酒の方が合うな〜。 けれど、私たちは2人ともお酒に弱いので、オレンジジュース。 アルコールは、部屋でのお楽しみに取っておく。 |
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ケロイの乗ってきた車は、休憩になると上の画像のとおりゲストが屋根の上に登って2人の世界。 私たちは、オレクイアにもジュースとおつまみを進めながら、片言の会話で盛り上がる。 どっちが良いというんじゃなく、ただ文化の違いを感じる。 やがて、ケロイもやってきて、マサイの話やマサイ語、日本語を教えあって盛り上がる。 英語のできない私がコミュニケーションを取る唯一の方法、つまり唯一の武器は、超カタコトのスワヒリ語なのだが、ションポーレのゲストはナイロビ在住者や、ラグジュアリークラスの人々なので、英語はもちろん、駐在員になるとスワヒリ語だってできちゃう人がいる。 なので、ここでは唯一の武器すら通用しないと踏んで、従業員に多く雇われているマサイ族の言語、マサイ語を事前にちょっとだけ勉強してきたのだ。 とは言っても、挨拶程度。 しかも、机上で勉強しただけなので、発音があっているかどうか分からないままの挑戦。 付け焼刃の勉強は、すぐに崩れ、「ちょっと待ってね」と、英語で書いたマサイ語の発音と和訳を併記したカンペを取り出す。 それを見つけたオレクイアが、「ちょっと見せて」と言うので見せると、これが大受け。 「ソバタデケショ(おはよう)、アシェ・オレン(ありがとう)、オレセリ(さようなら)・・・・・」と読み上げていく。 ケニアは英語が公用語、国語がスワヒリ語で、学校の授業も英語で行われるので、就学者はこの2つに出身部族の部族語を加えた3言語が話せるのだ。 オレクイアも大学まで出ているそう。 外国資本のものが多いロッジで、地元の人を雇用することは、賃金で就学のチャンスを与えることにもなる。 就学の機会が増えれば、地元の人にとっては迷惑でしかない野生保護区も(家畜を野生動物に襲われたり、土地を奪われたりするだけで、直接的には良い事はないのだ)、循環して自分達の生活を潤すものだと理解してもらえるのに役立つかもしれない。 一方で、遊牧民族のマサイが遊牧を止め、保護区の周囲が農耕地に変わってしまうと保護区間を移動する動物の動きが封じられるという危険性もあるのだけど。 難しいことかもしれないが、しかしやはり就学の機会が増えて、地元にも利益が還元され、保護区を守る理由も理解してもらるような、お互いにとって良い方向に進むと良いなと思ったりするのである。 そのためには、こういう地元のケニア人を従業員として雇用したり、地元の材料で食事やロッジを提供している場所を、ゲストが選ぶことも大切なことなのかもしれない。 さて、ひととおりカンペを読み終えたオレクイアとケロイ。 「これは日本語でなんと言うのか?」と聞くので、「おはようございます、ありがとうございます」と教えていくと、あっという間に飲み込んだ。 思わず 「かしこいねーーー!!!」 と言うと、またまた2人が大うけ。「かしゅこいねー、かしゅこいねー」と連呼している。 何がおかしいのか聞いてみると、かしこいねー(発音は、「かしゅこいねー」に近い)は、マサイ語で「Come back」という意味なんだって。 「マサイのビーズは、ビーズそのものもマサイが作ってるんですか?」 真偽の程は定かでないけれど、昔はビーズを作ってたと耳にしたことがあるので、長年の疑問だった質問をしてみる。 「ブレスレットやネックレスはマサイのママ(女性)が作ってくれるけど、ビーズそのものはナイロビで買ってきますよ」 ってことだった。 ふ〜、すっきり!! さらに、話題はマサイ族の話へと流れていく。 もちろん、つたない英語と、ボディランゲージ、擬音などを総動員しての会話だ。ほぼ言いたい事は伝わってしまう。 「耳の上に開いてる穴は、針みたいなのであけるの?」 「火で焼いた針金で思い切ってあけるか、アカシヤの太いトゲで少しずつあけます。」 「全員?」 「全員!!!」 と言いながら、おつまみについていた爪楊枝を、耳の上の部分にあけた穴に通してくれる。完全に爪楊枝が通っちゃってるし。 「耳たぶの穴がとっても大きい人がいるでしょ?あれは、耳飾りで、だんだん大きくなってくの?」 「そう、耳たぶの穴は小さな刀であけるので、だんだんと穴が伸びていきます。大きな耳飾をつけて踊ると、耳飾が揺れてとても美しいんだ。」 なるほどなるほどー。 積極的に答えてくれるケロイの横で、オレクイアが頬につけた円形の傷を、自慢げに見せてくれる。 痛さに耐えるこれらのことは、マサイの人にとって、強さの証明でもあるのかもしれない。 男性だけでなく、女性にも割礼の風習が残っているし、女性の割礼の賛否両論や他の部族にも残っていることは別として、とにかくマサイは強い。 カレン・ブリクセンの「アフリカの日々」によれば、マサイ族はその頑固さゆえ奴隷になったことがなく、牢に入れられれば3ヶ月もしないうちに死んでしまうため囚人にもなれず、当時のイギリス植民地法では、マサイ族に投獄刑を適用せず、罰金刑だけにしていると書かれている。 彼女の著書の中では、否定的なニュアンスで書かれているマサイだが、その頑固さが孤高の戦士と呼ばれる所以だろう。 「みんなクリスチャンネーム持ってるでしょ?」 「ケニアはクリスチャンが多いです」 「マサイの、部族信仰みたいなものってないの?」 「ありますよ。山に登って、大きな木につまずいたとき、そこに神様が宿ると言われてます。また、ヤギを焼いて立ち上った煙に神様が降臨してくるとも言われています。」 ・・・と、この英語は長くて私にゃ〜理解不可能だったので、友人が訳してくれる。 「日本にも、山、木、岩、海、あらゆる自然に神様が宿るという考えがありました。」 こんな長くて難しいのも友人の返答だ。 マサイとの会話は楽しく、興味は尽きないけれど、無線がオレクイアを呼んでいる。 どうやら、暗くなるので帰ってくるようにとロッジからのお達しが入ったようだ。 暗くなったガタガタ道を戻っていると、時々ウサギが横切っていく。 夜行性の動物が動き始めたようだ。 |
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陽が落ちたロッジに戻ると、電気が灯されていた。 部屋までの道は暗いので、マサイ族のムゼー(御老人)が、懐中電灯で足元を照らして部屋まで案内してくれる。 英語が話せないらしく、スワヒリ語で何か話しかけてくる。夕食の時間を尋ねているよう。 今日は疲れたので部屋での食事をお願いしている。 すぐに食事にしたかったので、 「サモジャナヌス(19:30)」 と答えると頷き、懐中電灯を消して早足で去っていった。 視力の良い彼らには、闇の中での懐中電灯など不要なのだろう。 昼と打って変わって幻想的な室内。 |
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19:30を過ぎ、20:00前になっても食事が来ないので、私のスワヒリ語が通じなかったか・・・と少々がっくりしながら、シャワーを浴びる事にする。 20:30食事が運ばれてきた。 もしかして「サンビリナヌス(20:30)」って言ってしまったのかも・・・。 部屋にはベッドサイドと、数箇所に灯りがついているだけで、暗くてよく見えないのでムゼーにもらった懐中電灯で足元を照らしながらテーブルへ。 「暗闇で、砂が敷き詰められ歩きづらい道を食事を持ってくるのは大変だねぇ。明日はダイニングで食べようね。」 と友人と話しながら、有難くワインと共に食事をいただく。 |
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部屋の中でも、夜になると、夜行性の生物が活発に動き出す。 電灯でオブジェのように照らし出されてるのは、どこにでもいるヤモリ君。 |
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ボケボケの写真は、屋根にぶらさがるコウモリ。 キューキューと独特の甲高い声で鳴いて元気一杯。 眠ってると、カサカサと小動物らしきものが、蚊帳の向こうで動いてる。 ベッドの周りは草や小石なので、何かが来ると音で分かるのだ。 昼に見たリスかもしれないと思いながら、再び夢の中へ。 |
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