朝食を終えて部屋に戻り、歯磨きをしたら約束の時間。 遅れてったら置いていかれるかもしれないので、急いで支度を整える。 車に行くと、オクボさんは制服を脱いで私服に着替えていた。 友人と私は、休憩中のオクボさんの邪魔をしないよう、一番後ろの席に座って、何にもしゃべらない。 オクボさんも、何もしゃべらない。 静かに車は出発。 無線も切って、ラジオから音楽が流れている。 車窓からは、朝や夕方よりも多いんじゃないかという位の動物が見える。 時々、ゾウやライオンを停まって眺め、誰も何もしゃべらず、静かにまた車を走らせる。 写真も撮らない。 素晴らしく心地好い空間だ。 ・・・・・・と、自分でも思いがけないことが起こった。 涙が止まらないのだ。 最初は、たぶん嬉しかったのだと思う。 ケニアの旅行形態は特殊で、ずっと車に乗って移動をしゲームドライブをする。(バックパッカーとかだと、また違う形を取るんだろうけど) 車を降りるのは、休憩を兼ねたお土産物屋さんか、ロッジに到着したとき位のもの。 だから、地元のお店に入り、地元の人と話をし・・・という機会が極端に少ない。 ケニアに着いてからというもの、ずーっと車に守られた旅行者に過ぎないという壁を感じていた。 ウィンドウ1枚で隔てられているだけだけど、それがどうしようもなくもどかしい距離を作っている。 だけど、音楽を聴きながら、いつものような説明も何もない車に乗ってると、途端にこの大地に溶け込めたような感覚に陥った。 うまく言葉にできないけど、観光客でなく、ケニア人であるオクボさんと同じ感覚で車に乗ってるような感じというか・・・。 ずっともどかしく感じていた、この大地にとって自分は観光客に過ぎないという隔たりが解けたような気がして、それが嬉しくて、涙がこぼれたのだと思う。 だけど、そのうち自分でも説明のつかない感情に変わり、この時から毎日、ゲームドライブに出るたびに、移動で町並みを走り抜けるたびに、涙が出て止まらなくなってしまった。 何だろう。遺伝子レベルでこの国が愛しいのだ。 友人は「前世はケニアに住んでたのかもしれないね」と言った。 私は前世なんて信じてないんだけど、この時ばかりは、『ああ、そうなのかもしれない』という気がした。 そう思うしか説明がつかない程の、他のどの場所でも感じたことのない郷愁を覚え、懐かしくて、苦しいのだ。 けれど、もしも前世なんてものがあって、本当にケニアに住んでいたのだとしたら、その時はきっと「日本に行きたい」と思っていたのだろうとも思う。 やがて車は、高台に到着。 「ここは車から降りても大丈夫ですよ。」 初めてオクボさんが口を開いた。 N.P.やN.R.には大型の動物や肉食獣もいるので、車から降りてはいけないことになっている。 けれど、稀に車から降りることを許されている場所があるのだ。 「ここは一人でよく来るんですか?」 「はい。ここに来て、メール打って、時々昼寝して、ロッジに戻ります。」 ひゃーっ、贅沢な時間〜〜〜。 木の株に座って景色を眺めていると、 「カメラ持って来てないですか?写真撮らないの?」 とオクボさん。 朝のゲームドライブまで、ずーーーっと写真を撮ってたのに、今回全然撮ってないのが不思議なようだ。 日本人の心は細やかなのだよ。 ・・・と思いつつも、せっかくそう言ってくれたので、バッグからカメラを取り出す。 |
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だーれもいない、だーれも来ない、とっておきの場所。 聞こえるのは、風が渡る音と、鳥のさえずりだけ。 風が強くて蚊がいないので、マラリアの心配もしなくていい。 時々、とーーーーーーーーーーくの下ーーーーーーーーーの方に点のようなシマウマが見えたりする。 教えてもらわなくちゃ、100%気付かない。 1時間位ここでゆっくりと過ごして、再び車に乗り込む。 |
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もうお昼過ぎ。 陽射しが強くなったので、木陰で休憩。 草食動物は、大きな木の下には行かない。 ヒョウが隠れてるかもしれないからね。 この木なら、大丈夫。 |
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フサホロホロチョウも、アカシアの木陰で涼んでる。 | |
ライオンも。 メスの群れかと思いきや、たてがみが生え始めてるオスもいる。 斑点があるのは、まだ若い証拠。 |
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う〜、眠い。。。 | |
ゲレヌクは、せっせとお食事中。 | |
アミメキリンもお食事中。 | |
3時間ほどドライブをして、ロッジに到着。 友人が、オクボさんに尋ねていた。 「途中、目に涙を溜めてるゾウがいたんだけど、ゾウって泣くの?」 「はい、泣きます。だけどどうして泣くのかは分かっていません。私だけが気付いたと思ったけど、気付いてましたか。」 ・・・・・・・・・がびん。気付かなかったよ。 ところで、ゲームドライブを早朝と夕方にするのは、その時間帯が動物の活動時間だからなんだけど、昼間のドライブの方が動物がたくさんいたような気がする。 後から聞いたところ、観光客が増えすぎて動物のストレスになっているため、今は昼間の方が動物が多いこともあるんだとか。 この状態を見ると、それも頷ける。 |
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